棟梁が育つまで
内田工務店に弟子入りした大工は、どのようにして一人前になっていくのでしょうか? そのプロセスについて、内田社長が語ります。

Q:大工修業は何から始めるのでしょうか?

大工修業は、まずは作業場の掃除や片付けに始まり、先輩の下について、手元の単純作業をしながら、次第にひとつひとつ、仕事を覚えて行きます。たとえば、最初からのみやノコギリを使った刻みはできません。まずは、電動でホゾを開ける角ノミ機で加工したホゾ穴の中のボソボソしたところをノミで取ることから始めます。いくつもやっていくうちに、ノミをどう使うと木がどう削れるかが分かっていき、次第に手刻みができるようになっていきます。昔と変わらないやりかたです。 IMG_0076

Q:道具はマイ道具があるのですか?

のみやかんな、ノコなどの手道具は、基本的に自分専用のものを使います。いわば自分の手の延長ですからね。道具をいい状態に保っておくことも、いい仕事をするための必須条件です。なまっていては、思うように仕事はできませんからね。 新人は先輩から、かんなやのみなど、刃物の研ぎも教わります。仕事の後や休みの日にやってくる子も多いです。積み重ねていくことで、だんだんにできるようになっていきます。器用に何でもできるよりも、コツコツとひとつのことを身につけていくことが大事です。 丸のこなどの電動工具を使うのは、手の道具が難なく使えるようになってから。今どきの組立大工は、電動工具しか使えない人も多いようですが、あくまでも手の道具が基本。機械は、手の道具の延長です。

Q:一人前になるまではどのくらいかかりますか?

どの材をどこに用いるか、どう刻むかを判断して墨付けができるようになるのは、早くても3〜4年はかかりますね。石の上にも三年と言いますが、大工仕事のおもしろさも分かってくる頃です。棟梁を張るようになるまでは、最低でも5年、本人に自信がつくには、10年は必要ですね。 IMG_0067

Q:昔と今とで大工修業に違いはありますか?

基本的にはやることは同じです。ひとつ違うところがあるとすれば、休憩になると、それぞれ好きな飲物を自動販売機で買って来ちゃうんで、お茶の淹れ方を学ばないということかな。昔は下の者がみんなのお茶を淹れるので、湯の温度、お茶っ葉の量、出す順番など、いろいろと気を遣うことを学んだものですけれどね。まあ、これも時代の流れですね。